Google、Apple、Facebook、Amazonの買収一覧から見える現在と未来の戦略

By | 2014年9月5日

ba707b45043e0d45c0d011944178e4d5_s

最近、米アマゾン、ゲーム実況配信のトゥイッチを9.7億ドルで買収というニュースがネットを賑わせていました。

このニュースを見ていてふと「あれ、9.7億ドルでの買収って高いんだっけ?」という疑問がよぎりました。海外では企業による買収が盛んに行われていますが、最近の買収の傾向やIT業界の進もうとしている方向についてあまり分からなかったので、今回はIT企業の代表格であるGoogle、Apple、Facebook、Amazonが過去に買収した企業とその買収額、そしてその傾向について調べ、今後の予想を考えました。

    ■目次
    巨人IT企業たちの買収からその先を考える
     1.IT企業4社の過去6年の買収企業一覧
     2. Googleによる買収
     3. Appleによる買収
     4. Facebookによる買収
     5. Amazonによる買収

 1. IT企業4社の過去6年の買収企業一覧

各企業ごとの買収戦略に関する考察は後述するとして、まずはIT企業4社の過去6年間の買収企業を、公表されている買収額順に一覧化しました。トップから順に並べてはいますが、その額にはかなりの差があります。

買収企業一覧

(wikipediaCrunchBaseを参考に筆者作成)

基本的には2011~2014年の間で高額な買収が行われています。この4社の中で買収額の大きさで言えば、世界時価総額ランキング(2014年8月末時点)1位のApple3位のGoogleを差し置いて、WhatsAppを190億ドル(1兆9000億円)で買収したFacebookが頭一つ抜きん出ていますね。続いて125億ドル(1兆2500億円)でMotorolaを買収したGoogleが続きます。その後、100億ドルを超える買収は行われませんでした。

それでは、それぞれの企業が近年どのような買収をしているかを見ていきましょう。

 2. Googleの買収企業

まずは、ハードウェア系を主として圧倒的買収企業数を誇るGoogleからです。

▼事業ジャンルごとの買収企業数(Google)
Google買収企業グラフ
(wikipediaを参考に筆者作成)

まず、Googleは他の3社と比べて、買収した企業数が圧倒的に多いことがあげられます。Googleは自社内のリソースに満足せず、積極的に買収を行っています。その数は2012年、2013年には少し落ち込んだものの、2011年と2014年には25社以上にのぼっています。

上のグラフを見ると、ここ2年の傾向としてハードウェア周りを強化していることが分かります。これは、Googleの秘密施設にて次世代技術の研究を行うGoogle Xプロジェクトのためでしょう。このプロジェクトでは、仮想空間でのテストが行われているとされる「自動運転車」や、ウェアラブルデバイスの呼称とともに世界を期待感で包んでいる「Google Glass」などの研究開発が行われています。

この期間に買収した中で、とりわけ買収額の大きかったのは以下の2社です。

Motorola Mobility : 125億ドルモトローラ_pic

(http://www.motorola.co.jp/)

1位はダントツで、2011年125億ドル(1兆2500億円)で買収したモバイルデバイスメーカーMotorola Mobilityです。これは1998年創業のGoogle史上、最高額での買収になりました。これはAndroidのエコシステムを競合企業との特許紛争から保護することに主眼を置いた買収でした。そして2年と経たず、特許の多くは手元に置いたまま約30億ドル(3000億円)で中国PCメーカーのレノボに売却しています。この売却には先端技術開発部門(ATAP)は含まれていないので、この部門のメンバーは引き続きGoogleのもとで開発することになるのでしょう。

Nest : 32億ドルNest

(https://nest.com/)

次に額が大きかったNestスマートサーモスタット(温度調整デバイス)煙と一酸化炭素の検知器を製造する企業で、2014年1月32億ドル(3200億円)で買収されています。IoT(モノのインターネット)の時代がやってくると囁かれていたタイミングでの買収だったので、Googleが買収したというニュースは多くの人を興奮させました。その一方で、同じくスマートデバイスなどを開発していこうとしているAppleはなぜ買収しなかったのかという議論もあったようです。

今後の展開予想

今年買収を発表したデザイン会社のGeckoを手に入れたことから、現在取り組んでいるスマートデバイスのデザインを、現在のタイプから更にユーザーにとって親しみやすく、かつ使い勝手の良いものにしていくのでしょう。「Google Glass」に代表されるスマートデバイスは、まだまだ生活の一部として使用するには特異な形をしているため、きたるウェアラブルの波を制するためにも馴染みやすいデザインが重要になってきます。スマートカーやスマートウォッチなど、Appleとの競合関係は更に激化していくことが予想されます。

Google Xで開発しているプロジェクトは、前述の「Google Glass」「自動運転車」のほか、「ARヘッドマウントディスプレイ」「ドローン(小型無人飛行機)」「空中風力発電」「血糖値管理のコンタクトレンズ」「ネットワーク接続のため成層圏に飛ばす気球」「音声認識」「人工知能」などが公表されています。Googleの持つ技術・知能・資金を結集したプロジェクトに、否が応でも期待が高まりますね。

 3. Appleの買収企業

次にソフトウェア・ソーシャル系の企業を買収しているAppleについてです。

▼事業ジャンルごとの買収企業数(Apple)
Apple買収企業グラフ
(wikipediaを参考に筆者作成)

Googleと比較すると買収数は少な目です。ここ2年ではソフトウェア、ハードウェア、ソーシャル系の企業を多く買収しています。Tech Crunchによると、ソフトウェアでは本の内容解析サービスBookLampの買収により、AppleのiBookでも内容解析が可能になったり、Amazonのような本のサジェスト機能がついたりするかもしれないそうです。後述しますが、ハードではやはりBeats Electronicsの買収が大きいですね。

また、2013年にはソーシャル系の数字が高くなっています。地図系サービスを展開している企業を数社買収し、地図アプリ「Maps」の強化を図ろうとしていて、Googleの「Google Maps」とシェアを取り合っています。

さて、2011年~2014の間に買収された企業のうち、買収額でトップだったのは以下の企業です。

Beats Electronics : 32億ドルBeats studio_pic

(http://jp.beatsbydre.com/home)

今年5月にAppleが高級ヘッドフォンブランドであるBeats Electronics32億ドル(3200億円)で買収すると発表したことは記憶に新しいと思います。iPodの成功によって大きく成長したAppleは「音楽は重要」だと位置づけていますが、もはや音楽ダウンロードサービス「iTunes」の売上は頭打ちで、また逆に近年存在感を増している「Spotify」などの音楽ストリーミングサービスの台頭に脅かされつつあるようです。今回AppleはBeats Electronicsを買収することで、同社の持つ音楽ストリーミングサービス「Beats Music」も手にすることになります。小さな買収を繰り返してきたAppleが32億ドルという巨額を投資したのは、成長の望めない音楽ダウンロードからストリーミングサービスへ舵を切るためだっとと言えますね。

Anobit : 3.9億ドルAnobit_pic

(http://www.technobuffalo.com/tag/anobit/)

Anobitイスラエルの半導体スタートアップで、2011年3.9億ドルで買収されました。Anobitはフラッシュメモリー技術を得意としていますが、フラッシュメモリーはAppleにおいてもiPhoneやiPad、MacBookAirの記憶装置として使用されています。そしてこの技術によってデバイスの軽量化、薄型化に成功しています。Tech CrunchによればAppleがAnobitを買収したのは、前述したようにフラッシュメモリー技術がAppleにとって重要であること、そしてもう一つはAnobitの抱えるチップエンジニアを擁したいという目的のためだとしています。

今後の展開予想

2011年にCEOがスティーブ・ジョブズからティム・クックに代わり、Appleの戦略も変わってきました。「iPhone」「iPad」「Apple TV」「Mac」などのAppleデバイスとAppleのOSでのみ動作するアプリを今後も開発し、デバイス間の連携も強めていくでしょう。これこそAppleが自前主義と言われる所以です。

また、9月9日に発表されるiPhone6に搭載されるiOS8では、ヘルスケアアプリが新しく追加されるようです。健康管理系アプリは、ウェアラブルデバイスとの相性が非常に良く、例えばスマートウォッチで毎日の脈拍を図り記録し、その情報を元により良い生活のためのアドバイスをくれたりするでしょう。Appleは自社製品が人々の生活の中に自然に入り込んでいくようにし、Apple製品での囲い込みを進めるはずです。


 4. Facebookの買収企業

そしてモバイル部門を強化しているFacebookです。

▼事業ジャンルごとの買収企業数(Facebook)
Facebook買収企業グラフ
(wikipediaを参考に筆者作成)

Facebookは2012年に上場していますが、その前後での買収数が非常に増加していて、2009年以前はほとんど買収を行っていません。自社に必要な技術を見つけると、素早く買収するのがFacebookの買収スタイルの特徴と言えます。

上のグラフから、Facebookはここ数年でモバイル分野の企業を多く買収していることがわかります。Investor Relationsによると、Facebookは2014年3月末の時点で月間アクティブユーザーが12.8億人、そのうちモバイルユーザーは10.1億人です。このパイの大きさを考えれば、モバイル分野でどんどん新しい技術を獲得していくのは筋と言えます。

またソーシャル分野にも力を入れていて、Facebookによる買収額トップにあたるWhatsAppInstagramを買収しています。ハードでは、仮想現実で注目を集めているOculus VRの買収にも成功しました。それぞれ下記で詳しく見ていきます。

WhatsApp : 190億ドルWhatsApp_pic

(http://www.whatsapp.com/?l=ja)

メッセンジャーサービスの中で首位を走るWhatsappは、今年2014年190億ドル(1.9兆円)という巨額で買収されました。Facebookが同じく急激に伸びている写真共有メッセンジャーサービスのSnapchatに、30億ドルもの巨額での買収を断られたことも話題になりましたが、Whatsappはその代わりとしての買収なのでしょう。買収後はFacebookとの相乗効果もあるようで、この記事によるとFacebookの力を借りてユーザー数が月に2500万人増加したようです。

Oculus VR : 20億ドルOculus Rift_pic

(http://www.oculusvr.com/)

2004年に創業したFacebook史上、2014年3月に発表したOculus VRの買収はこれまで仕掛けてきた賭けの中でも最大クラスのものでしょう。20億ドル(2000億円)という買収額も去ることながら、Oculusが専門とする仮想現実は今最も熱い分野なだけにかなりの注目が集まりました。仮想現実を体感できるデバイスの一般発売が待たれますね(一部開発者向けには配布されています)。

Instagram : 10億ドルR_Instagram_Icon_Large

(http://instagram.com/)

また、3位に入ったInstagram10億ドル(1000億円)での買収でした。こちらも同記事によればFacebookとの相乗効果により、1か月に1000万人ペースで新規ユーザーを獲得したそうです。

今後の展開予想

グラフを見ても今後さらにモバイルアプリに注力していくことは明らかですが、最近は一つのアプリに多機能を搭載するのではなく、一アプリ一機能がトレンドになってきています。スマホ自体をプラットフォームとする考え方ですね。その流れを汲み、Facebookはメッセージ機能を「Messenger」アプリとして独立させることに成功しました。「Facebook」アプリからメッセージを送るときは、自動的に「Messenger」アプリが立ち上がります。

また、20億ドルで買収したOculusの技術を使い、スマートフォンビジネスの次の潮流になると期待される仮想現実分野に乗り込んでいきます。マーク・ザッカーバーグの考えでは、Oculusの方向性として最初は仮想現実と相性の良いゲーム分野に打って出るが、その後Oculusをゲームを含めて様々な仮想現実機能のプラットフォームにしようとしているとのこと。「Facebook」というSNSとどのように絡めていくのかは不明ですが、仮想現実の分野でFacebookが他者をリードしたのは間違いないでしょう。

 5. Amazonの買収企業

最後に、メインのECからゲーム事業に出ていこうとしているAmazonです。

▼事業ジャンルごとの買収企業数(Amazon)
Amazon買収企業グラフ
(CrunchBaseを参考に筆者作成)

Amazonは買収に関して言えば、買収額も買収企業数も低く、他3社と比べて積極的とは言えません。2011年以降ではソフトウェア企業の買収が大きい割合を占めています。それ以前はEC系サービスの買収がメインで行われており、ジャンルは書籍、靴、ベビー用品、高級ブランドと多岐に渡る企業を買収してきました。これらはAmazonの主たる事業であるECを強化する意味で重要でしたが、昨今の買収状況を見ると、EC系で欲しかったサービスや販路は大方揃ってきているようですね。

Twitch : 9.7億ドルTwitch

(http://www.twitch.tv/)

Twitchとは、一般ユーザーがゲームプレイ動画を無料でライブ配信することのできるサービスです。一部報道では「GoogleがTwitchを10億ドルで買収する」と言われていたこともあり、Amazonによる買収が発表されたときにはネット上が熱を帯びました。ゲーム実況動画は、既存のゲームユーザーが視聴するだけでなく、そのゲームを欲しいと思っている人が実際のプレイ動画を見ることで購買欲を高めることもあり、近年非常に伸びている分野です。任天堂もYoutubeでの動画掲載を公式に許諾するツイートをしていました。


今後の展開予想

Amazonは今年2014年にDouble Helix Gamesというゲーム開発スタジオを買収しています。最近発表されたゲーム実況配信のTwitch買収とあわせて、Amzonがゲーム市場に本格的に参入する準備は整いました。

Amazonは声明で、「Amazonは、顧客向けに革新的なゲームを構築することを目指した継続中の取り組みの一環として、Double Helix Gamesを買収した」と述べた。

Amazonは2014年4月に「Apple TV」のようなスマートTVの「Amazon Fire TV」を発売しています。このデバイスでは、音声検索ができたり、Amazon Game Studiosのゲームをダウンロードして遊ぶことができます。また、先日Amazon初のスマートフォンである「Fire Phone」を発表しました。こちらはGoogle製のアプリが使えなかったり、機能面で他スマホに劣るとして、現段階ではあまり好評ではないですが、今後「Fire TV」でのミラーリングなどが望めるしょう。スマートTV、タブレット、スマートフォンとデバイス面でようやく出揃ったAmazonが、ゲーム事業を武器にAppleと全面対決していくことになりそうです。

その他では、Googleも取り組んでいるドローン(小型無人飛行機)の分野があげられます。Amazonとしては、ゲーム分野はまだ取り組み始めたばかりですが、主力事業のECではドローンを取り入れることで、配送業者を必要としなくなったり更に早く届いたりなど大きなイノベーションが起こることになるでしょう。

 最後に

いかがでしたでしょうか。

冒頭で挙げたAmazonによるTwitchの買収額の9.7億ドルは、InstagramがFacebookに買収された時の金額(10億ドル)に近いことがわかりました。もちろん一概に買収額で価値を判断することはできませんが、一つの指標として考えることはできそうです。Twitchの買収額がInstagramとほとんど同額と考えると、Amazonのゲーム事業への参入は生半可な気持ちではないということが推測できます。

今回は買収額とその企業を中心に取り上げましたが、買収後にどのように活かされていくのかについても注目していこうと思います。
最後までご覧頂きありがとうございました!

以上、Google、Apple、Facebook、Amazonの買収一覧から見える現在と未来の戦略』でした。


ガイアックスでは、モバリストというデジタルコンテンツの新規制作・レンタル提供のサービスをおこなっております。

調査資料無料ダウンロード