家庭用殺虫剤「キンチョール」を長年にわたり提供するKINCHOの広告がTwitterを中心に話題になりました。それは新聞広告でありながら、ユーザーが自分自身で完成させるものでした。
通常の広告とは異なり、幾重にもバズる仕組みが設計されていることに感銘を受けたため、この広告のコンテンツとして優れている側面を考えてみました。
■目次
1.バズを生む仕掛け(SNSでのシェア設計)が満載
冒頭にも書いた通り、この新聞広告はユーザーが自分自身で完成させるものです。具体的には広告部分が折り紙になっていて、完成させると夏場に台所に黒く輝くアイツができあがります。
これを説明動画を見ながら折っていくとどうなるか。
こうなります。
時間掛けて、キモいものが出来上がりました😓#キンチョール pic.twitter.com/gpKTUD2rdN
— ラビ @22期生✌️🍳🎸 (@Rabbitbrid) 2017年5月27日
なんともすさまじいものが完成します。一度見たら忘れられなさそう。
その見た目とは裏腹に、この広告には計算された拡散のポイントが隠れています。ジャンル分けしてみると、以下の4つになりました。
- 自分でやってみたくなる広告
- 広告を見た瞬間に理解できる内容
- 一言いいたくなるテーマ
- 写真を撮りたくなるビジュアル
では、それぞれについて詳しく見てみましょう。
2.自分でやってみたくなる広告
この広告がコンテンツとしてうまく機能しているのは、見て終わりではなくユーザーが自分で完成させるものだからだと思います。「自分もつくってみよう」というアクションを促すコンテンツです。
そして、媒体として新聞を選んだというところに工夫があります。
この広告は実際に切り取って折っていきます。ここに新聞紙という紙の特性がうまく活かされています。
また、新聞紙だから手が汚れやすいという欠点がありますが、題材が題材なので汚れても反対にネタにできるのです。
3.広告を見た瞬間に理解できる内容
人間がある対象に興味を持つかどうかの判断は一瞬で行われます。一目見て理解しがたいものはなかなか受け入れがたいものですよね。
ではこの広告はどうでしょうか。
広告には家庭用殺虫剤の商品の写真と「キンチョール」の文字に加え、折り紙部分はすべて黒。明らかに台所で黒光りする嫌われ者のアイツができあがるであろうことは想像に難くありません。
そして折り紙自体が非常に難しいことが「超難解折り紙」と明示されています。「わざわざ苦労して不毛なことをすることが、SNSに投稿したときにコンテンツ力を持ちそうだ」と無意識下で感じられたのではないでしょうか。
4.一言を言いたくなるテーマ
以前、診断コンテンツが広く拡散される要素を考察(100万PV超の心理診断テストに共通していたバズる秘密――結果画面主義と自己表現の場)しました。
そしてもう一つ「ツッコミを入れる余地」という要素が重要になります。なぜなら(中略)「オチやボケに対する【ツッコミ】」という内容が多く見受けられるからです。
つまり、内容に関して一言を言いたくなるものはソーシャル上で拡散されやすくなります。ユーザーはその一言を言いたいがために投稿するのですから。その観点でこの広告を見てみると、一言どころかいくつも言いたいことが思い浮かびます。
制作説明の動画が1時間もあり、制作にも1~2時間かかるほどの超難解折り紙であるということ。上でも書いたように、非常に苦労したことを報告しているつぶやきが散見されました。
やってもた ☺️♻️
テスト期間やのにキンチョールの
新聞広告見つけてもて
一時間かけてゴキブリ折りました〜😈何やってんの自分 😑💨#キンチョール pic.twitter.com/Dstajn4Skd
— すみれ (@sumire0711s) 2017年5月28日
また、SNSで投稿するためにつくったという方も多いでしょう。1時間もかけてつくるのだから、その間にSNSの投稿内容を考えていたのではないでしょうか。
5.写真を撮りたくなるビジュアル
広く拡散されるためには画像や動画といったクリエイティブも重要です。その点、この広告は制作に1~2時間ほどかかるだけあってかなりリアルに仕上がるため写真に収めたくなります。リアクションが欲しいためにSNSに投稿する方にとって、ある意味で最高のビジュアルをしています。
そして制作が難解であることもリアクションを引き出すための要素になります。そこで活きてくるのが広告下部です。この「超難解」の文字を完成品とともに写真に収めることで、結果的に広告効果が高まるわけです。
なんちゅうもん作らせてくれたんじゃキンチョール‼️ pic.twitter.com/8jJ3BIxdQN
— mt (@fowllia) 2017年5月27日
まとめ
最後に改めて、KINCHOの広告が拡散されたポイントをまとめます。
- 自分でやってみたくなる広告
- 広告を見た瞬間に理解できる内容
- 一言いいたくなるテーマ
- 写真を撮りたくなるビジュアル
見せて終わりではなく、自分でつくれるコンテンツとしての広告。計算されつくした設計と完成品のリアルさに鳥肌が立つ思いです。
以上、『広告のコンテンツ化。ユーザーが完成させるキンチョール広告の仕掛け』でした。
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